
― 人は「最初に見た値段」で判断している
先に結論!
価格は“数字”ではなく“感じ方”で決まります。
人は、最初に見た価格(=アンカー)を基準にして、
その後の値段を「高い」「安い」と判断しています。
つまり――
“最初に見せる価格”の設計こそが、売場の心理戦。
同じ商品でも、見せ方ひとつで「高い」が「お得」に変わるのです。
お客様は「計算」ではなく「印象」で買っている
スーパーの棚の前で、こんな経験はありませんか?
- 「こっちの方が安い気がする」
- 「この真ん中のやつが一番いいかも」
実はその判断、脳が“計算”ではなく“印象”で選んでいるんです。
お客様は、1円単位で比較しているわけではありません。
「最初に見た価格」を心の中の基準にして、
それより高いか、安いかを“なんとなく”感じ取っています。
仕事帰りの忙しい時は、印象が大事よね
この心理現象を「アンカリング効果(Anchoring Effect)」と呼びます。
たとえば、498円の商品を最初に見てから348円を見れば「安い」と感じます。
でも198円を先に見ていると、同じ348円が「少し高い」と感じる。
これが、売場で日常的に起きている「価格の錯覚」なんです。
💬 前回の記事はこちら👇
見た目の“まとまり”で安心感を生む③回に続き、
今回は“価格の見せ方”で信頼と納得をつくる心理テクニックを解説します。
⚖️ アンカリング効果とは
アンカリング効果とは、
「最初に与えられた数値(=アンカー)が、その後の判断基準として残る」
という心理現象のことです。
たとえば、最初に「高価格帯の商品」を見たあとに「中価格の商品」を見ると、
“お得に感じる”ことがあります。
逆に、安い商品を先に見ると、その後の価格が“高く感じる”のです。
服屋さんでも、ブランドショップに行った後いつものお店いくと とても安く感じるんだよね
つまりーー
「何を最初に見せるか」で、お客様の感じる価値が変わるということです。
🧩 売場で使える4つのアンカリング技術
① 「価格の階段」をつくる
棚の中に、価格の流れ(高→中→低 or 中→高→低)を意図的に配置します。
💡 目的別のおすすめ配置:
- 利益率を上げたいとき → 高→中→低(お得感を演出)
- 回転率を上げたいとき → 中→高→低(中間層を動かす)
お客様は、最初に見た価格を基準に“得か損か”を判断します。
その「基準」をズラして、“得した気分”をつくるのが狙いです。
損したい人はいない!
② 「松竹梅」理論で“真ん中”を選ばせる
人は「一番安いのは不安」「一番高いのは贅沢」と感じやすい傾向があります。
そのため、3段階の価格設定(松・竹・梅)を用意すると、
自然と“真ん中”が選ばれやすくなります。
📊 例:
- 松:プレミアム商品(398円)
- 竹:定番商品(298円) ← ✅ 一番選ばれやすい
- 梅:お試し商品(198円)
棚構成では、真ん中の「竹」を中央に配置し、両サイドに松・梅を並べることで、
“目線の中心”と“心理の中心”が一致します。
③ 比較POPで「損したくない心理」を刺激する
お客様は、“得したい”よりも“損したくない”という気持ちの方が強い傾向にあります。
その心理を活かして、比較POPで価格差を明確に見せるのが効果的です。
💬 例:
- 通常:単品128円
- 比較POP:「2個で240円(1個あたり120円)」
このように見せると、「お得だ」と感じてもらいやすくなります。
ただし、POPを多用しすぎると逆効果です。
1棚につき1テーマ(例:「まとめ買い」または「セット割」)に統一するのがポイントです。
これみると、1個だけだと損してしまう!って思ってしまうんだよね(笑)
④ 「端数価格」でお得感を演出する
「198円」と「200円」――わずか2円の差なのに、なぜ安く感じるのでしょうか。
それは、人が数字を見るときに“左端”を基準に判断しているからです。
これを左端効果(Left-digit Effect)といいます。
💡 実践のコツ:
- 高価格帯は“きっちり価格”で信頼感を出す(例:500円)
- 日常品や特売品は“端数価格”でお得感を演出(例:198円、298円)
たった2円でも、脳の印象は大きく変わります。
たしかに2円しか変わらないのに198円と比べ 200円のほうが高く感じるぞ
💬 売場での実例
🧃 例:カレールー棚(松竹梅構成)
| 段 | 内容 | 価格 | 心理効果 |
|---|---|---|---|
| 上段 | プレミアムルー | 398円 | 高品質訴求(松) |
| 中段 | 定番ルー | 298円 | 安心選択(竹)←購買集中 |
| 下段 | 徳用ルー | 198円 | 節約訴求(梅) |
見出しPOPに「人気No.1は“真ん中価格”!」と入れると、
お客様の選択を“肯定”しながら背中を押すことができます。
🧠 応用編:「価格 × 視線」の合わせ技
アンカリング効果を、視線設計(Zパターン)と組み合わせるとさらに効果的です。
- 高価格商品は左上(最初に目に入る位置)
- 中価格商品は中央(目線が自然に止まる位置)
- 比較POPは右下(Zパターンの終点)
この配置にすることで、お客様の視線が自然に“得感の流れ”をたどります。
💡 実践のポイントまとめ
✅ 最初に見せる価格が“基準(アンカー)”になる
✅ 真ん中を選ばせたいなら「松竹梅」構成
✅ 比較POPで“得感”を可視化する
✅ 端数価格は“安さの演出”に効果的
✅ 高→中→低の流れで“納得感のある棚”をつくる
🧩 現場の成功事例
あるスーパーでは、ドレッシング棚の価格構成を
「高価格(498円)→中価格(348円)→低価格(298円)」に組み替えたところ、
平均単価が約13%アップしました。
お客様は「安いもの」ではなく、「納得できるもの」を選んでいたのです。
“価格の見せ方”が“価値の感じ方”を変えた好例です。
中価格の商品に、「人気№1」とか書いているとさらに納得できそうだ
🎯 まとめ:「価格は“感じさせ方”で決まる」
売場は“数字を並べる場所”ではなく、“印象をデザインする場所”です。
価格を「戦略的に見せる」ことで、
お客様は“納得して買う”という安心感を得ることができます。
💬 結論:
- 価格の印象は、心理設計で変えられる
- 値下げではなく“見せ方”で売上は上がる
- アンカリングとは、“価格の演出技術”そのものです
📘 参考リンク
- アンカリング効果が人の価格評価に及ぼす影響について(高知工科大学・長谷川愛菜): アンカリング効果を消費者の価格評価の観点から実証分析している研究。 高知工科大学
- “小売業で使われるアンカリング効果とは|二重価格表示などの例”(口コミラボ): 小売現場での価格提示・割引表示におけるアンカリング活用事例を紹介。 口コミラボ
- “最初の情報が基準となり購買に影響するアンカリング効果”(東芝テック株式会社コラム): 同じ商品で価格差を見せたときの消費者認識の変化を紹介。 Toshibatec
🪄 次回予告:見せ方の科学⑤
価格の「見せ方」に関する心理学的な研究や実践事例を紹介している外部リンクです。
記事の理解をさらに深めたい方におすすめです。
Z型視線理論(視線設計)
お客様の視線の動きをデザインすれば、棚は語り出す。
“目を止める・流す・導く”――視線の科学を、次回徹底解説します。👁️



