誰も立ち止まらない棚

閉店1時間前。
通路の端に、ひっそりと置かれたワゴン。

赤いシール。
少し曲がった値札。
積まれたままの在庫。

そこは、
“敗北の棚”と呼ばれていた。

新人の頃、
そこに商品を運ぶたび、
胸のどこかが、少しだけ沈んだ。

「売れなかったもの、集めといて」

その言葉は、
まるで、
仕事そのものを片付けられているみたいだった。

① 値下げ棚は、“結果”じゃない。“記録”だ

売れ残りを見ると、
人は、すぐに答えを出したがる。

  • 高すぎた
  • タイミングが悪かった
  • 商品力がなかった

でも、本当は違う。

そこにあるのは、
“失敗”じゃなく、“履歴”だ。

この価格で、
この場所で、
この言葉で、
このタイミングで――

売場が選んだ“仮説”の記録。

値下げ棚は、
売場の“ログブック”だ。

発注量、展開場所、時期など記録していこう

② ロスは、数字じゃなく“質問”だ

廃棄率。
値下げ率。
在庫回転。

どれも大事だ。
でも、それは、
答えじゃない。

本当に大事なのは、
その数字が投げかけてくる、
“問い”のほうだ。

  • なぜ、この棚で止まったのか
  • なぜ、この曜日で止まったのか
  • なぜ、この隣で、手が伸びなかったのか

ロスとは、
売場からの、質問状だ。

「なぜ?」と疑問に持つことが大切だ!

③ “下げる”のは、価格だけでいい

値下げをすると、
気持ちまで下がることがある。

「もう、どうでもいいか……」

その瞬間、
売場は、
本当に負ける。

売れる値下げ棚は、
投げやりじゃない。

  • 理由が書いてある
  • 使い道が書いてある
  • 今日中であることが、伝わっている

価格は下げる。
でも、意味は、下げない。

商品の価値を下げないことが大事!

④ “負け棚”を“作戦会議室”に変える

ある日、先輩が言った。

「ここ、反省会場ちゃう。作戦会議室や」

値下げ棚の前で、
メモを取り始める。

  • 止まった商品
  • 止まった時間
  • 止まった場所

そこに、
“次”の売場の、
設計図が生まれる。

売れなかった棚は、
次に売れる棚の“下書き”だ。

⑤ ロスが教えてくれる、売場の“クセ”

店には、
それぞれ“クセ”がある。

  • 朝に強い店
  • 夕方に強い店
  • ファミリーが多い店
  • 単身が多い店

ロスは、
その“性格”を、
一番正直に映す。

売れ残りは、店の鏡だ。

住んでいる人々によって対応はもちろん違う

🔍 トレーナー課題|今日の“質問”を拾え

今日、
値下げ棚にある商品を、ひとつ選んでほしい。

そして、自分に聞く。

なぜ、ここまで来た?

価格じゃなく、
場所でもなく、
“理由”を考えてみる。

それが、
明日の売場を、
少しだけ、強くする。

おわりに|売場は、負けから進化する

売場は、
完璧にならない。

だから、面白い。

失敗する。残る。下げる。考える。変える。

このループが、売場を、
“強い場所”に育てていく。

値下げ棚は、終点じゃない。

次の売上の、出発点だ。

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